2022年のアメリカ合衆国のドラマ映画。
主演がケイト・ブランシェット。
ターという女性指揮者の話。
ターを性暴力や若い音楽に有望な女性を好きになる女性とは感じず浅い理解になってしまいました。後から考察してみるとかなり難解で深い話だったようで。
完璧を求める指揮者ターが教えているジュリアード音楽院で自分と意見の合わない教え子を諭そうとして問題が起こる。
完璧主義者であり、時には冷徹に先生であり、指揮者であり、子供のお父さん(女性だけど)であり、夫婦であり、作曲者であり、と多忙に暮らしていて。映画を観た後、解説を読んでそんな話だったのか?と初めて知ったのがクリスタの存在でした。名前と顔が一致しない。
ところが、一つつまずくとどこまでも坂を転げまわっていくようになり。
それでも、最後のほうで変わらずに威厳があり、指揮者としても人としても自分を見失っていなかったところがかっこよかった。最後のほう指揮はモンスターハンターのゲーム音楽の指揮だったようで。だから、ヘッドホンを付けていたんだな。指揮者を音楽全体をリードする人と位置付けていたターからすると屈辱的に見えるヘッドホン。それでも、音楽に対する情熱は変わらなかったということで、ここで初めてターを褒めたのがこの監督の本心だったようで。
ケイト・ブランシェットの演技が光る。
この映画のポスター写真がこの映画を物語っているようで。
音楽に疎い私ですが、この映画の音楽を聴くと確かにチェロはこの人のほうが上手いよなとか、この指揮者のためが長すぎる、そうかもしれない、とか考えさせられた。
プレッシャーにやられそうになるくらい、常に緊張感があって、権力の中枢にいてでも、この役はケイト・ブランシェットだからできた役なのかもと。
友達はケイト・ブランシェットはクールビューティーでかっこいいと言っていたがまさにそう。
『キャロル』の時のマダムの役も良かったが、ターでまた新しい地平をつかんだようだ。アジアの地に行って、マッサージの店を探し出したのだが、その風俗のような店で指名する仕組みがまたオーケストラのようで。一人顔をあげている人の場所がオルガの場所と似ていて。自分の今まで性暴力やお気に入りの登用にこのマッサージ店で嫌気がさしたのか、ターは店の外で吐き気をもよおしてしまう。
こういう格好良く、ピリピリした役の似合う役者も珍しいのだろう。
最後のスタッフロールの音楽も好きでした。
音楽の威厳を知る映画でした。
色々な作曲者の名前がスタッフロールに出てきておおっと思いました。
この映画の最終的に言わんとしていることは、性暴力と才能の関係や、ターの自分本位な権力の使い方や。どんな地位になろうとそれでも音楽を愛した一人の人間のことだったのだと思います。ジャニーズ事務所のことも考えると性暴力は許されることではないのだと思います。ここまで、最初の一回観ただけでは見つけられなかったのが残念。