映画が好きすぎる眼鏡女子の独り言

淀川長治に強い憧れがある映画感想家

『ある男』星4っつ★★★★#平野啓一郎#安藤サクラ

2022年の日本のミステリー/スリラー映画。

原作が平野啓一郎

出演妻夫木聡安藤サクラ窪田正孝

愛したはずの夫は、全くの別人でした…という話。

夫は誰だったんだ?という謎からどういうことだ、どういうことだと話が進んでいき。

この映画去年の日本アカデミー賞で演技賞を取りまくっていて、安藤サクラやっぱり演技上手だなと思うのだった。

義理のお父さんの柄本明とよく一緒に映画に出ていることが多くて、演技一家だなあと。『PERFECT DAYS』の柄本時生から今年の大河ドラマの『光る君へ』の柄本佑から、今をときめく俳優たちだなぁ。

しかも安藤サクラは今年の日本アカデミー賞で主演女優賞『怪物』と助演女優賞ゴジラ-1.0』を受賞している。特徴的な顔をしていてなおかつ演技が抜群に上手。

さてさて、この映画、興味深いミステリー作品だなぁ。

平野啓一郎は私が大学生時代、京都大学の学生作家として芥川賞を受賞してから有名になっていって、ちょっと小難しい小説を書いているイメージがある。

イメージがあるのは読んでないから。今年は小説を読もうと思っているが、平野啓一郎まで触手が伸びるかな?

窪田正孝は『春に散る』と同様、ボクシングシーンが印象的。

この映画の最初に出てくる絵と最後に出てくる絵が同じ絵で、最初に出てきたときは窪田正孝のことを言っているのかな?と思ったら最後には妻夫木聡のことを言っているんだろうというのが意外で良かった。

 

 

『PERFECT DAYS』星4.5点★★★★☆#ヴィム・ヴェンダース#役所広司

2023年の日本とドイツの合作で制作されたドラマ映画。

監督がヴィム・ヴェンダース

主演が役所広司

日本のトイレは世界一美しい、というのを知らしめた映画だと思います。

ヴィム・ヴェンダース監督は『パリ、テキサス』と『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が好きな映画なのですが、その次くらいにパーフェクトデイズが入るくらい良かった。

役所広司演じる平山が寝てから起きるまでの間見る夢のような映像がヴェンダース監督の『ベルリン・天使の詩』を思い起こさせるような映像に似ていたような気がする。

この映画何が良いかって、平山が自分の好きな音楽(それもカセットテープで)を聴き、自分の好きな本を読み、少しの酒を飲み、そして自分の誇りをもってトイレ清掃員の仕事をしている、ところがいい。

多分、この平山は昔お金持ちの家に住んでいたのだと思う。そうでなかったら、音楽の趣味(私は音楽、詳しくはないのでよくは分からなかったが渋谷で1万円以上のカセットテープというのは音楽好き界隈では有名な音楽なのでしょう)やパトリシア・ハイスミス(『太陽がいっぱい』や『キャロル』の小説を書いた女性小説家なのだと今日認識しました)や幸田文のような小説を読んでいるようなインテリっぽい趣味になるかなあ?と思った。

音楽がやけにかっこいい映画だなと思った。

こんなに少しのもので満足し、足ることを知る映画は素敵だと思った。

最後に監督が木漏れ日という日本語を紹介していて、木漏れ日の光の移り変わりやそれをいいなあと思う平山の人生を肯定している素敵な映画でした。

『BLUE GIANT』星4っつ★★★★#上原ひろみ

2023年の日本のジャズ音楽アニメーション映画。

ピアノが上原ひろみ

BLUEGIANTはクレアという雑誌で漫画の紹介で知り、この前の日本アカデミー賞でアニメ映画を知りました。

まず、何が良かったって音楽を表現するのにアニメーションの手法がかなり極限まで合っているということ。とくに表す音楽がジャズというのがこのアニメーションの宇宙的な音楽を表現していたり、演奏している人がかっこよく見える表現をしていたり。

ド直球なテナーサックス奏者宮本大と技巧的で理論的に音楽を考えるピアニスト雪祈、そして始めたばかりでまだ失敗をするけど、それでもものすごい勢いでドラムを吸収していく玉田。

ピアニストの雪祈の演奏を上原ひろみがやっていた様子。

技巧的なんだけどそれを内臓がめくれるくらいの演奏にしたのが上原ひろみだからこそなんだと思います。

音楽なんだけど、スポコン漫画を見ているような気さえしてきます。

題名のBLUE GIANTはジャズ界の中でも赤く光る炎よりもさらに熱い青い色で燃えている炎のように熱いジャズマンのことを言うのだとか。

音楽アニメーションだと『のだめカンタービレ』とか『ピアノの森』を思い出すが、音楽の音のアニメーションでの表現方法だとこちらのほうが上回っている様子。

最後のほう、まさかの展開なんだけど、それでも夢を叶えた三人組。

音楽を漫画で知ると音楽自身を聴けなかったりするが、アニメーションだと音楽を聴けてなおかつ漫画の良さもあっていいものだなあ。

『椿の庭』星4っつ★★★★#富司純子

2020年の日本のドラマ/ドキュメンタリー映画

この映画ドキュメンタリーというのかな?

ドラマ映画だったけど、富司純子の家の庭や花、金魚、虫や家のたたずまいや家から見た海の様子、空や月虹などがその瞬間しか味わえないような気がしてドキュメンタリーと言えばドキュメンタリーなんだろうかとも思った。

うちの母が観たいと言うので観たが母は途中で飽きていた様子。

私はこの映画は家のたたずまいなどを表したい映画なんだろうなと思って結構観れた映画でした。

椿の庭と言うけど、椿だけではなく庭の花や虫、あとその時期その時期の果物を食べて(桃やスイカなど)季節を感じる映画でした。

葉山なのかなあと思ったがよく分からず。

こういう家で祖母と季節を感じながら過ごすのは尊いことだなと。

一人で暮らすには大変かと思ったけど、二人で暮らすにはとてもいい家でした。

富司純子の亡くなった旦那さんのお友達が遊びに来た時、とても幸せな友人関係なんだろうなと思った。

あまり事件も起きず、淡々とした映画ですがそれでも家を売らないといけないという事がおきて、富司純子が悲しんだり、薬を飲まなきゃいけないところ、薬を捨てていてささやかな抵抗をしていたり。

最後のほうで家を壊し始めたとき、あんなにいい家がこうなるのかと観ている私たちも悲しくなりました。

池にいた金魚が金魚鉢にいる金魚に変わり住んでいるところが変わってしまったのは人間も金魚も一緒なんだなと思った。

やはり、場所はその人の記憶を残す場所でもあるのだなと。

 

『あちらにいる鬼』星4っつ★★★★#寺島しのぶ

2022年の日本のロマンス/ドラマ映画。

監督が廣木隆一

原作が井上荒野

井上荒野が自身の両親である作家井上光晴と妻、そして瀬戸内寂聴の三角関係をモデルに描いている。

最初にこの小説の題名をきいたとき、あちらにいる鬼って瀬戸内寂聴のことかな?と思っていたら、調べたら死ぬと魂は天に召されて残りが地上で鬼となるという父井上光晴のことをそう言っていたみたい。

で、どういう映画かと言うと、三角関係は三角関係なんだけど、争うことをせず、寺島しのぶ豊川悦司は男女の恋愛とあと小説を書くというところで結ばれていて、また広末涼子豊川悦司も夫婦という絆とやはり小説を書くということで結ばれている関係でした。その寺島しのぶ広末涼子たちの家族のもとに出家した後遊びに行って手料理を食べてくるという関係。そして、最後には同じ男を愛した同士のように一緒に死に行く豊川悦司の看病をしたり。

寺島しのぶが髪を剃るところが、さすが女優!!だと思いました。

寺島しのぶと、廣木隆一荒井晴彦って『ヴァイブレータ』だったり『やわらかい生活』だったり常連の映画製作者たちの仲間で作っているんだなぁって。

広末涼子演じる役が旦那の浮気相手に寛容というか、人間できているというか。

うちの母が、瀬戸内寂聴は素晴らしい着物ばかり着ていて、着物の好きな人だったよと言っていました。

恋愛だけではない人間として人を好きになるということが表された映画でした。

 

 

『ブルーベルベット』星4っつ★★★★#デヴィッド・リンチ

1986年のアメリカ合衆国のミステリー/スリラー映画。

監督がデヴィッド・リンチ

主演がカイル・マクラクラン

デヴィッド・リンチカイル・マクラクランとはアメリカ合衆国のドラマ『ツインピークス』と同じですね。

さらにツインピークスと同じところにはアメリカの田舎町で青い空、綺麗な花が咲き明るい町を想像させるところで起こる事件だというところ。

奇妙なのがカイル・マクラクランが家の近くで人間の耳を拾うところから始まるというところ。

何やら、デヴィッド・リンチのあやしい雰囲気が醸し出されます。

ツインピークスでは、アメリカの田舎のチェリーパイやコーヒーの雰囲気で私もこのドラマをおばさんのうちで観る時、ドーナツを持参して観たのを覚えています。

この映画ではそういう食べ物は出てこなかったけど、アメリカらしい音楽やこまどりがこの映画のきもとなるものなんだなぁと思いました。

昔からこの映画を一度は観たいと思っていたのですが、念願かないました。

ローラ・ダーンの役はこの奇妙な耳の発見からどんどん暗闇に落ち込んでいくカイル・マクラクランを明るいアメリカと言うものへ引き戻してくれる役割を持っていました。

こまどりが虫を食べていておばさんは気持ち悪いというのですが、どんなに明るく見える世界も虫のようなものを食んでいるという、象徴のような気がしました。

妖艶な感じが昔読んだ谷崎潤一郎の『刺青』を思い起こさせるのでした。

 

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』星4.5点★★★★☆#押井守

1984年の日本の長編アニメーション映画。

高橋留美子原作のあの有名なうる星やつらの映画版。

監督が押井守

Youtuberで映画解説者のゆっこと言う人がうる星やつらのなかでも特別に変わっていて、監督が押井守で必見!!と言っていて、なおかつここ最近アマゾンで無料になっていたので観てみました。

うる星やつらでこんな深刻な映画を撮るのも珍しいと思うし、押井守だからやってくれたというのもある。

時間の感覚や自分の家だけ電気もガスも流れていて、近くのコンビニだけ食料供給がされているというので、深刻なんだけどそれでも明るい物語として観れるのが不思議です。

漫画『アイアムアヒーロー』とも違うし、小説『蠅の王』とも違う。

この映画の中心にはあたるとラムが確かにいるんだなぁ。

最初は学園祭のてんやわんやの中ここだけ時間が止まっているというか同じことの繰り返しでいつも学園祭前夜だというのが始まりなのだが、そのうちロビンソンクルーソーばりの生き残りをかけていて、そのうち飛行機に乗ってみたらまさかの事態になっていて、最後にはビューティフル・ドリーマーという映画の題名に納得させられて。

映像の中で風鈴がずーっとなっていて時間軸がおかしいと思うことがあったり、あたるが鏡にうつった世界みたいに何重になっていたり。

SF映画のような不思議があってどうなってしまうんだろうとドキドキしました。

押井守らしさが全開でした。

うる星やつらっていう感じがしないのも新鮮でした。

やっぱりこの映画は必見の映画でした。