映画が好きすぎる眼鏡女子の独り言

淀川長治に強い憧れがある映画感想家

『理大囲城』星4っつ★★★★#山形国際ドキュメンタリー映画祭

2020年の香港のドキュメンタリー映画です。

監督は顔を出すと香港当局に捕まってしまうので顔も名前も出していません。香港ドキュメンタリー映画工作者となっています。

香港ではこのデモの様子の情報を消そうとしているみたいです。この映画の素材も香港当局の分からないところに隠しているみたいです。

天安門事件があった頃のことをデモ隊を封鎖しようとしている警察の人たちも脳裏に浮かんでいたようです。

この映画の制作者たちは日本で1960年代に学生運動があったことは知らずにこの映画祭に出品したみたいです。

日本で学生運動があったようにほかの国でもデモ隊と警察のぶつかり合いみたいなことがあるみたいで、ほかの国にこの映画を持っていくと同じようなことが自分の国でもあった、と共感してくれるみたいです。

さて映画、香港理工大学の内部でデモ隊がいっぱいいるのを映しています。実際に香港理工大学の外で何が起こっているのかは映し出していません。多分、内部で情報のない中で学生たちがどう感じてどう行動を起こしているのかを知らせたかったのでしょう。

ただ、この映画は少し言葉足らずで何があって学生たちが戦っているのかはあまり描かれていません。

この映画について友達と話したことを書きたいと思います。私の友達は「到底受け入れられない理不尽なことを強制されて、普通の、穏健な手段で拒否ができない場合には一体どうしたら?!従うしかないのか、他に手段はあるのか?」と言っていました。

こういう映像を撮って世界に発表するっていうのが一つの抵抗なんだろうな。友達の真摯な言葉にはっとさせられました。

『へんしんっ!』星4.5点★★★★☆#山形国際ドキュメンタリー映画祭

2020年の日本のドキュメンタリー映画です。

山形国際ドキュメンタリー映画祭で観ました。今年の山形の映画祭はオンラインで参加できて山形に行かなくてもいいんです。簡単になったといえば簡単になったんですが少し寂しい気もしますね。

この映画は2020年のぴあフィルムフェスティバルでグランプリを取っているんですね。

この映画最初は視覚障がい者や聴覚障がい者など障がい者同士の壁を超えるという趣旨だったんだと思いますが、途中から身体障がい者の身体表現にシフトしていき最後には障がい者同士の壁はもちろん、それを身体表現で表してって終わっていった。なかなか見応えがある映画でした。

さっそく質疑応答で「身体表現のパフォーマンスで目には見えないような、言葉では表せないような感情、例えば愛のようなものを感じたが、演じている本人もそういうことを感じているものなのか?」というような質問を私がしたらこの映画の監督が「例えば理学療法で体を伸ばしたりしているそういうようなものとは違うあたたかなものを感じた」というようなことを言っていたのでダンスパフォーマンスや演劇は身体障がい者の身体表現が感情にとても影響を与えているということが分かった。

この映画の監督がカフカの変身という小説をもとにした演劇にでて体を少しずつ動かして最後には車いすから飛び出していくところで、目をきらきらさせているところが興味深かった。

映画の最後のあたりの身体表現もみんな楽しそうで良かった。

『9人の翻訳家囚われたベストセラー』星四つ★★★★

2019年のフランス・ベルギーのスリラー映画。

前に『鑑定士と顔のない依頼人』を私が紹介した英語の先生に、『9人の翻訳家囚われたベストセラー』を紹介されました。

なんでこの映画を紹介したのか分かるような気がします。多分ミステリー部分を楽しんでのことだと思います。

鑑定士と顔のない依頼人は突然人生を放り投げられるけど9人の翻訳家は徐々にミステリーがじわじわきます。だます側はいつでも用意周到なんですがね。

さて、もちろん面白くはありだまされた感はあるのですが、それでも観終わった後考えてみれば十分あり得る話なんだよななどと思ってしまいます。

そして多分この映画の主人公、文学の先生に会って、意気揚々としていたのが最後ああいう結末になって悲しくそれでこのトリックを考えたのだと思います。

私も大学時代大学の先生たちがキラキラしていましたが、もっと少年時代に教授にあって、文学の勉強をさせてもらえるなんていい恩師を見つけたのだと思います。自分の作品を読んでもらえる時の高揚感、それを認めてもらった嬉しさ、そんなものを知っていったのでしょう。

自分の作品をこの先生がいいと言ってくれたらかなり嬉しいそんな先生がいますね。

私が大学時代に会ったすごい先生は前列にどう考えても社会人だろっていう人たちがいっぱいつめかけていて教授がこれはどこのページについていたかな?と一言いうものならその前列の人たちがバラバラバラとテキストを開いて先生何ページに載っています、と熱意の伝わる授業でした。

この9人の翻訳家の主人公はそういう先生を見つけた幸運の持ち主です。だからこそ最後のああいう結果になったのだと思います。

 

 

『エセルとアーネストふたりの物語』星4.5点★★★★☆

2016年のイギリスのアニメ映画。

『スノーマン』などで知られる英国の絵本作家レイモンド・ブリッグスが自身の両親を絵本にしたものをアニメ化した映画。

絵は温かな感じですが話の内容がどこにでもいるような家族の愛の話でその背景に戦争あり技術の進化あり。

この頃はアニメづいています。

日本のアニメもいいものが多いけど海外のもいいのが多い。いつかアレクサンドル・ペトロフ監督の『春のめざめ』が観たいなぁ。

話を戻して、エセルとアーネスト決して完璧な人間像ではないけれど、それでも好感が持てるのは政治に対し真剣に考えている一市民の考えを持っているお父さんやどこまでも息子を無償の愛で時に頑固に育てているお母さんがいるからです。

スノーマンも絵柄を知っているだけですが好きなタッチだけど、困った顔をしているようなお母さんの顔、年とともに薄くなっていくお父さんの髪が素敵です。

近所の隣の家の奥さんに息子の自慢をするところが、ああお母さんダメダメと思うのですが、そのあと息子が警察の御厄介になった時、隣の奥さんに聞かれたとき強がりを見せるお母さんに分からないでもないなぁとも思ったり。

背景にヒットラーのこととかが描かれていましたが、自分はイギリス人だけどもし自分がユダヤ人だったらと思いをはせるお父さんの政治に関する考え方が好きです。

息子は母に反抗期になったりしていますが、それでも年取ったお母さんに愛の言葉をかけるところが好きでした。

自分の旦那のことを忘れ、あの人は誰ですか?と息子に聞いているところが悲しくてでも人生の終焉を感じます。

温かな家族愛を表していますし、この絵本が大流行するのもうなずけます。

 

 

『AKIRA』星4つ★★★★#大友克洋

1988年の日本のアニメ映画。監督は大友克洋。原作漫画は大友克洋AKIRA

この映画は私が小学生の頃の映画で私は当時超能力者の子供たちやアキラって誰なんだろう?とわくわくぞくぞくして観ていた気がします。

二十歳以降に漫画のAKIRAを読んで終わり方がそうそうそういうことなんだよな、と納得したような覚えが。なにぶん随分昔のことなので少し記憶があいまい。

で、この頃友達とAKIRAの映画の話しになって久しぶりに観たくなり観ました。友達はこの音楽家が素晴らしいと言っていました。

2019年のことを1988年にやっており、オリンピックも2020年延期となりかぶるところもあったかな、と。オリンピックの最初の企画ではアキラの世界も描いてたのだとか。

昔想像していた日本より今の日本のほうが街も荒廃していなくいいんじゃないかと。コロナさえなけれがばサステナブルなんかが取り上げられており、住みよい国日本なんじゃないかと。私自身がファストフードやファストファッションなんかの恩恵をまさに受けており、イオンに行ってユニクロの洋服を買い、マクドナルドでポテトやソフトクリームを食べたり。この映画とは違う世界に生きていますね。スマホもネットもこんなに普及しているとは思わなかったんだろうな。

さて、ちなみにここ最近はてなブログを書けなかったのはイギリスドラマ『ダウントンアビー』を観ていたからです。ドラマだし、全52話あるしなぁと思って。

さて、AKIRA、漫画とアニメだったら漫画のほうがもっと内容が濃かったような気がします。

ナウシカ』や岡野玲子の『陰陽師』のような壮大さがありました。

 

 

『ディリリとパリの時間旅行』星5つ★★★★★#ミッシェル・オスロ

2018年のフランス・ドイツ・ベルギーの冒険アニメーション映画。

監督はミッシェル・オスロ、コンピュータアニメーションによって制作された。

こんな美しいアニメはラウル・セルヴェの『夜の蝶』や川本喜八郎の『鬼』以来か。夜の蝶も鬼も短編映画だけど、この映画は長編映画でこの美しさを維持していたところにかなり驚かされます。

多分写真をもとにしたアニメーションがあるんだと思います。

この監督の1998年の『キリクと魔女』もよかったけどディリリとパリの時間旅行もよかった。

キリクと魔女はアフリカの地の今までに聞いたこともない音楽やアフリカの地の自然や美術に圧倒されていましたが、今回の映画はパリの風景や衣装、建築、美術、音楽にかなりうっとり。

それだけでなくアニメーションの色彩の美しさに感動しました。

ディリリがアフリカの地では肌の色が明るいと異人扱いされ、フランスの地では肌の色が白くないと異人扱いされる。すごく難しい環境にありながらすごく素直で頭のいい子だなと思って感情移入してしまう。

この映画は写真を絵にしたところも手書きで描いたアニメーションもどちらもうっとりしてしまう。

それに、パリであった有名人たちもパリという街がどれだけ才能に満ち満ちた場所なのかわかって私にとってパリが特別な街になっていきます。

話の内容は女性の解放をうたった映画でよかった。

子供向けのアニメーション映画だと書いてありましたが、こんな素晴らしい映画を観た子供はどんな素晴らしい大人に成長いていくものなのか。

 

 

『太平洋ひとりぼっち』星4っつ★★★★#市川崑#石原裕次郎

1963年日本のアドベンチャー映画。

監督は市川崑

市川崑の映画は『ビルマの竪琴』も『細雪』も『悪魔の手毬唄』も面白いからこれも面白いかな?と思って観てみた。

石原裕次郎が演ずる主人公はヨットに熱中し、しまいには一人で太平洋横断を夢見るようになる。

冒険家というのは命がどうなるかよりも太平洋横断後、アメリカの警察に捕まることよりも、太平洋横断するっていうことに重きをおくんだな。

この映画のほとんどが一人でヨットの中にいるときか、家族に太平洋横断を止められるところとかが流れている。

石原裕次郎も一人語りで、自分ともう一人の自分が話し合っていたりする。

ヨットの太平洋横断途中に砂糖とバターとクリープを合わせて混ぜてこれはケーキのような味がするなどと言って食べていたがあんまり美味しそうに思えない(笑)でも何も食べるお菓子がないとおいしく感じるんだろうか?

あと、水があまりなく米をビールで炊くところがあるがこれもどんな味がするんだろう?と謎である。

嵐の時はつらいが天候がいいときはヨットに乗っていてさぞいい気分なんだろうなと思う。

音楽が武満徹芥川也寸志。この映画に合っていてすごくいい音楽だ。

石原裕次郎自体が海好きだからこの映画を作るのも楽しかったんじゃないかと思う。

最後にサンフランシスコに着いたときほっとするとともに異国の地に自分の力だけで来た、冒険家としてやってやったぞ、という気分になる。

この映画が冒険家の熱い心をどこまでも伝える映画だった。