映画が好きすぎる眼鏡女子の独り言

淀川長治に強い憧れがある映画感想家

小説『大佐に手紙は来ない』ガブリエル・ガルシア=マルケス星3.5点★★★☆

1961年にコロンビアの作家ガブリエル・ガルシア=マルケスが出版した短編小説。

昔からこの作品の題名だけ知っていて、大佐に手紙は来ないとはどういう意味だろうと不思議に思っていた作品です。大佐という立派な肩書を持っている人が手紙を待っているのはそれだけ大切にしている友達から手紙が来ないという意味なのか?それとも大佐という立派な肩書を持っている人も年を取ると人々から忘れられていき手紙の一つも届かないという意味なのか?と思っていたら大佐に軍人恩給の知らせがいつ来るのか待ちわびているという意味なのだと読んで初めて知りました。

この小説を読んでいるのと同時並行にマルケスの『生きて、語り伝える』という自伝も読んでいたら、マルケスは自分の本当にあったことをもとにして小説を書いているところもあるんだなと思いました。

例えば、この小説の中の映画館は神父が許可した映画しか観れないとか、最後のセリフでもし食べるものがなかったら何を食べていけばいいの?という妻のセリフに大佐が「糞くらえ」と言ったところ、自伝ではお父さんが糞くらえと言ったところでお母さんが何か動物の糞を用意していたことがあったところや。

この小説の翻訳をした野谷文昭先生に全カリ、つまり一般教養で授業を習ったのも懐かしい。スペイン語を知っていたら小説がさらに面白くなるという先生の言葉は糞くらえの「ミエルダ」という言葉が別の意味で何回かこの小説の中に出てきたところからもうかがえるところです。

 

 

小説『痴人の愛』谷崎潤一郎、星4っつ★★★★

1947年に初版が発行された日本の小説。

谷崎潤一郎著作。

今日は初めて小説についてブログを書いてみました。小説、漫画、映画をみてそれを一年間に100本くらい読んだり観たりできればいいなと思いました。

谷崎潤一郎は高校時代に『刺青』を読み、高校生だけあってこんなドキドキする小説があるんだなと思って、マゾヒズムにはまった小説家でした。

30代ごろ『春琴抄』を読んで谷崎潤一郎の中でベストというくらい話の展開が凄いなと思ったりしたものです。

今日、『痴人の愛』を読み終わって、よくこんな小説が書けるなぁと想像力や文章力に感激したり。

谷崎潤一郎の変態臭さが表れていて、友達と谷崎は変態だだの、こういう恋愛を小説化するのはとても珍しいことだだの話していました。

ナオミズムというだけあって、この小説のナオミは男を翻弄する女だなと思いました。

この小説の主人公譲二さんは面白いくらい翻弄されていて、最初は譲二さんの考えでナオミと結婚するのですがそのうちナオミに翻弄されるところが、『刺青』と同じ筋書きだなとも思いました。

変態臭いけど話の内容は面白いし、読みやすい。

谷崎は悪魔主義とはよく言われたものだなと思います。

完全に愛だけではなく、愛と憎が入り混じっているところが人間らしい。

谷崎の小説は今まで読んだものだけでも全部良かった。

いつか『細雪』も読んでみたいものだなと思っています。

 

 

『浮雲』星4っつ★★★★#高峰秀子#成瀬巳喜男

1955年の日本のロマンス/ドラマ映画。白黒映画。

監督が成瀬巳喜男

原作が林芙美子

キネ旬ムックのオールタイム・ベスト映画遺産の日本映画のベスト3に入っていてすごく人気のある映画なんだろうなと思って観た映画。

うちの母と観たんだけど二人でこの映画面白いかなぁ?暗い映画だと言いながら観た。

高峰秀子が好きになった男が煮え切らない男でこんな人と恋愛するのは嫌だなと思った。高峰秀子の演技は良かったけど、こんな男にぞっこんな女性にもなりたくないとも思った。

男も女も嫌な感じ。

でも最後には高峰秀子の純愛だったんじゃないかな?とも思ったが、私には好きになりきれない映画でもあった。

友達が森鴎外の『舞姫』をあの男は酷い男だと言っていたが、この映画のほうがもっと酷い男だと思った。

なんでこの映画がこんなに人気があるのか?ちょっと私には理解できない。

でも、どんなに冷たくされても高峰秀子がやっぱりこの男を好きでなんだか離れられずにいて、時々嫉妬したり、冷たくしたり甘くしたり。

最後に男が泣いていたところを見るとフェデリコ・フェリーニの『道』に似たところもあるのかな?とも思った。

こんな恋愛はしたくない。もっと心躍る人を好きになりたいものだとおもった。

森雅之の顔も濃くてあんまり好きにはなれなかった。

成瀬巳喜男は男と女の心模様を映し出すのがきっとうまい監督なんだろうな。

人にはそれぞれ得手不得手があるんだろうな。

私は黒澤明のエゴイズムを描いていたような映画のほうが好きだな。

 

 

『イヌとイタリア人、お断り!』星4っつ★★★★

2022年のフランス、イタリア、ベルギー、スイス、ポルトガルの合作のドキュメンタリー/ストップモーションアニメーション映画。

アヌシー国際アニメーション映画祭コンペティション部門でプレミア上映された作品。

私は知らなかったけどこの監督結構前から映画製作をしていたみたいです。

ストップモーションアニメーションということで気になって観た映画です。

水の上にハートマークを作るのとか、アフターエフェクトとか使って作ったのかなぁと観ていて思った。

話の内容は自分の祖先、おじいさんやおばあさんの貧乏や戦争で大変だった時代、イタリアのムッソリーニの時代の話を伝えている。

ストップモーションアニメーションは結構な手間がかかった映画だと思う。

人形の手が上手く表現されていてクレイアニメで作ったのか他の素材で作ったのか分からないが、どうやって作ったのか教えてもらいたいくらい(笑)

ちょっと残念なのが人形がどれも同じに見えて誰が誰だか分かりづらかった。同じテイストでも顔の表現や洋服の違い、体型の違いをはっきり分からせることが大切だと思った。

この映画にはストップモーションアニメーションの部分と動画で撮った部分とがあって時々それが一緒になっていたりする。ヤン・シュバンクマイエルと似たところか。

アヌシーの映画祭がコマドリだけでなく、動画で撮っている部分もある映画も出品していいのか知りたいところです。

 

 

『ケイコ目を澄ませて』星四つ★★★★#三宅唱#岸井ゆきの

2022年の日本の映画。

私は知らなかったけど、日本アカデミー賞岸井ゆきのが主演女優賞を取った映画だったみたいです。

映像が綺麗だなとか(画質はざらついている)映像が温かみのある色合いだなっと思っていたら16ミリフィルムで撮られた映像らしい。なんか納得。映画は解像度が高くなくってもいいんだなぁと観ていて思った。

この映画はホテルで客室清掃の仕事をしながら、プロのボクサーになった聴覚障害者の一人の女性の心の動きを表したものだった。

耳は聞こえないけど、確かに不自由な時はあるけど、決してかわいそうとかそういう気持ちにはならず、同じ人間として見ることが出来るそういう作りの映画だった。

プロのボクサーになってそれで満足ということはなく、プロになってもさらに悩みがあり続けるものなんだなと苦しくもあった。でもジムの会長が主人公の試合のビデオを見ながら夜遅くまで考えてくれていたり、自分がボクシングを少し休みたいというのも悪いと思うくらい周りの人が応援してくれていたり、頑張り続けないと、と自分を鼓舞する映画でもあった。

ボクシングは戦おうという気持ちがないとやり続けられないスポーツだと三浦友和が言っていたのが心に残る。

この映画はほとんど言葉であらわさない映画でそれでも心の動きを事細かに伝えようとしているところが素晴らしい。

 

 

『花様年華』星4っつ★★★★#ウォン・カーウァイ#トニー・レオン#マギー・チャン

2000年制作の香港映画。ラブストーリー。

監督がウォン・カーウァイ

主演がトニー・レオンマギー・チャン

大人の恋愛と紹介されていて、色気が凄いと書いてあった。

確かにトニー・レオンの色気が凄い。

ウォン・カーウァイは『恋する惑星』や、『天使の涙』が好きだったが私個人としてはトニー・レオンより金城武のほうがぱきっとした男のかっこよさがあって好きだなぁ。トニー・レオンも確かにかっこいいけどね。

ウォン・カーウァイの他の映画と同じで映像がかなりかっこよい。煙草をふかしているシーンとか煙草の煙が綺麗だなと思わせる。また、マギー・チャンのチャイナ服が彼女のスタイルの良さや、服の斬新さやがとてもかっこよかった。

プラトニック・ラブで手を握るかどうかだけで大人の恋愛を表しているのが良かった。

でも、私は不倫映画とか不倫小説とか好きになれないのよね。そんな背徳感より、初恋のすがすがしさとかのほうが好きだな。

この映画でいいと思ったのが、トニー・レオンの奥さんの顔が一切出てこないとか髪型で奥さんとはわかるんだけどとか。もちろん、マギー・チャンの旦那の顔も表れなくてそういう潔さが映画をさらに良くしている。

私が高校時代とかにウォン・カーウァイ流行っていたけど、今はどうしているのかな?

と思ったら今も監督をやっているとのこと。

そうかぁ、私が知らないだけで昔からの監督は今なお活躍しているんだな。

今度観てみよう!

 

 

『エスター』星4.5点★★★★☆

2009年のアメリカ合衆国製作のホラー/ミステリー映画。

うーん、なかなか面白い。

私はホラーも嫌いじゃなく、『13日の金曜日』から始まって『エルム街の悪夢』とかも好きなんだけど、エスター、やってくれました。

この自分だけこの子を不審がっていて旦那とかが信じてくれないというのはパターンとしてあるんじゃないかな。

子供たちは口をつぐんでしまい、次々と不審な点を見つけるのだがという話。

この映画の面白いところは全部ネタバレになってしまって私としてもなかなか言えない。

ピアノが一つの怖いところであり、白いバラの話もあとあと、このことを全部知っていてそういう行動に出るんだよなっていうところが気味悪いというか。

この映画でもホラー映画でよくある演出がされていて最初のうちは二度見させて何もないんだけど、そのうち二度見するとそこにエスターがいるという怖い展開がまっている。

あと、エスターがリボンをつけているのにもあとあと意味があるんだよなぁと。最初は何も分からず観ていたけどそういうことかっと。

エスターの人間像が興味深い。

エスターに続きがあってそれも観たらいいのかな?

このエスターはホラー映画として人気があるようでyoutubeで紹介してあったり、人気投票に出ていたり。

前から興味があったけどようやく観れた!という感じ。

この娘、何か変って書いてある広告がまさにエスターの映画を言い表している気がする。

久しぶりのホラーで面白かったです。

 

エスター (吹替版)

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