映画が好きすぎる眼鏡女子の独り言

淀川長治に強い憧れがある映画感想家

『大河への道』星4.5点★★★★☆#中井貴一

2022年の日本のコメディドラマ映画。

主演が中井貴一

伊能忠敬大河ドラマとしてどうして取り上げられないのか?というお話。

脚本家役の橋爪功の作った脚本が良かった。最初に伊能忠敬が死んだところから始まる。それで、日本の地図を作ったはずの伊能忠敬が死んでから三年後にその地図の完成がみられる。どういう理由なのか?というところが面白い。

千葉県の香取市の職員が時代劇風の脚本のあらすじの役をやっているのがなんともいい。

伊能忠敬が死んでから地図ができるまでの話だから、大河ドラマとして伊能忠敬という題名は確かに変だけど、なんかやりようによってはできるんではないかなとも思ったり。最後に中井貴一橋爪功の弟子になりたいと言ったところが気が長い話ではあるけれどできるのではないか?ともわせる風。でも大河ドラマって一年を通して作る話だからこの脚本ではこの二時間の映画の中で終わってしまう話ではあるんだろうなぁ。

コメディ映画なんだろうな。

日本の映画ってコメディとか中高生向けの映画とか、はたまたシリアスな映画とかそういうのが多い気がする。アニメも多いね。

伊能忠敬の「ただたか」を「ちゅうけいさん」と呼んでいるのも、生まれ故郷の人たちの親しみを込めた呼び名で心温まる気がした。

それにしても衛星もない中、歩いて日本地図を作る根性が凄いなぁ。それを知ってイギリスが日本はすごい国だと思うところがなるほどと思った。

一人二役を出演者の多くがやっていてそういうところも新鮮だった。

 

『君の名前で僕を呼んで』星四つ★★★★#ティモシー・シャラメ

2017年のイタリア・フランス・ブラジル・アメリカ合衆国合作の恋愛映画。

主演がティモシー・シャラメ

イタリアの避暑地でひと夏の恋。ひと夏の恋だけど、エリック・ロメールの『海辺のポリーヌ』とは違い、ひと夏の恋は一生の思い出となって彼らの心に残るのだろうなと思った。

イタリアの避暑地の風景や食べ物、などがまたとても羨ましく、こういうところで夏を過ごすのは私には夢のような世界だなぁとも思った。

ゲイのカップルなんだけど、奇異な目で見ることはなく、どこまでも美しい恋愛という映画になっている。

観たことはないけど『モーリス』とかもこんな感じの映画なのかなぁ。

ティモシー・シャラメ演じるエリオのお父さんがゲイの恋愛に寛大でこの喜びや辛さを葬ってはいけないと言ったことが良かった。

男女の恋愛ではないので、秘密主義的で甘美でだからこそ美しい。

恋愛をする二人はどちらも頭がよく、才能に満ち溢れている。

夏の間中作曲や読書、詩作などに熱中する夏なんてなんて羨ましい生活をしているんだろうな。

才能に満ち溢れている二人だからお互いに惹かれ合っていったんだろうな。

漫画家、萩尾望都が書いた『トーマの心臓』を思い起こすような、それよりももっとエロチックで大人の映画なんだけど良かった。

ティモシー・シャラメが独特な顔をしていて、美男子なんだけどそれだけじゃなく個性的な顔が忘れられない。

初恋の悲しくも美しい映画でありました。

 

 

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』星4っつ★★★★

2018年のアルゼンチン・ウルグアイセルビア合作のドキュメンタリー映画

監督が『アンダーグラウンド』のエミール・クリストリッツァ。

ウルグアイの元大統領で、自分の給料の9割を寄付してきたホセ・ムヒカに焦点を当てた映画。

ホセ・ムヒカは個人的にすごく好きだし左翼思想も分かる。

分かるんだけど、今の時代社会主義のロシアは戦争をし、共産主義の中国は貧富の差が凄い。北朝鮮も中国も独裁主義に陥っていて、左翼思想どうなんだろうとも思う。

ずいぶん長い間資本主義と社会主義のいいとこどりはないか考えてきたんだけど、この頃は資本主義が世界の潮流なのかもしれないとようやく考え始めたところ。

でもだからと言って、アメリカの資本主義は金持ちと貧乏の分断が激しいと聞いているのでどうかとも思う。

GDP一位のアメリカみたいになりたいとも思わないし、二位の中国みたいにもなりたいとも思わない。三位のドイツとか四位の日本とかがなんだかんだと言って住みやすい国なんじゃないかなぁ。

それに資本主義、資本主義と言っても、サステナブルという言葉が出てきて、持続可能な社会というのは環境にも優しく、人が住みよい方向にいくのでは?と希望も持ち始めた。

環境に優しくと言っても、世界の政治が電気自動車にいくのかと思ったら、バッテリーの劣化やバッテリーの処分に困って、世界ではトヨタハイブリッド車やアフリカのほうに向けてのトヨタのトラックが売れてるとのこと。

政治的思想だけじゃなく、技術の進歩が世の中を分かる時代になっているんだなぁ。

資本主義一色になりそうな世界の中、ホセ・ムヒカはそれに一石を投じる存在なんだろうなぁ。

素晴らしい!!

 

 

『ある男』星4っつ★★★★#平野啓一郎#安藤サクラ

2022年の日本のミステリー/スリラー映画。

原作が平野啓一郎

出演妻夫木聡安藤サクラ窪田正孝

愛したはずの夫は、全くの別人でした…という話。

夫は誰だったんだ?という謎からどういうことだ、どういうことだと話が進んでいき。

この映画去年の日本アカデミー賞で演技賞を取りまくっていて、安藤サクラやっぱり演技上手だなと思うのだった。

義理のお父さんの柄本明とよく一緒に映画に出ていることが多くて、演技一家だなあと。『PERFECT DAYS』の柄本時生から今年の大河ドラマの『光る君へ』の柄本佑から、今をときめく俳優たちだなぁ。

しかも安藤サクラは今年の日本アカデミー賞で主演女優賞『怪物』と助演女優賞ゴジラ-1.0』を受賞している。特徴的な顔をしていてなおかつ演技が抜群に上手。

さてさて、この映画、興味深いミステリー作品だなぁ。

平野啓一郎は私が大学生時代、京都大学の学生作家として芥川賞を受賞してから有名になっていって、ちょっと小難しい小説を書いているイメージがある。

イメージがあるのは読んでないから。今年は小説を読もうと思っているが、平野啓一郎まで触手が伸びるかな?

窪田正孝は『春に散る』と同様、ボクシングシーンが印象的。

この映画の最初に出てくる絵と最後に出てくる絵が同じ絵で、最初に出てきたときは窪田正孝のことを言っているのかな?と思ったら最後には妻夫木聡のことを言っているんだろうというのが意外で良かった。

 

 

『PERFECT DAYS』星4.5点★★★★☆#ヴィム・ヴェンダース#役所広司

2023年の日本とドイツの合作で制作されたドラマ映画。

監督がヴィム・ヴェンダース

主演が役所広司

日本のトイレは世界一美しい、というのを知らしめた映画だと思います。

ヴィム・ヴェンダース監督は『パリ、テキサス』と『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が好きな映画なのですが、その次くらいにパーフェクトデイズが入るくらい良かった。

役所広司演じる平山が寝てから起きるまでの間見る夢のような映像がヴェンダース監督の『ベルリン・天使の詩』を思い起こさせるような映像に似ていたような気がする。

この映画何が良いかって、平山が自分の好きな音楽(それもカセットテープで)を聴き、自分の好きな本を読み、少しの酒を飲み、そして自分の誇りをもってトイレ清掃員の仕事をしている、ところがいい。

多分、この平山は昔お金持ちの家に住んでいたのだと思う。そうでなかったら、音楽の趣味(私は音楽、詳しくはないのでよくは分からなかったが渋谷で1万円以上のカセットテープというのは音楽好き界隈では有名な音楽なのでしょう)やパトリシア・ハイスミス(『太陽がいっぱい』や『キャロル』の小説を書いた女性小説家なのだと今日認識しました)や幸田文のような小説を読んでいるようなインテリっぽい趣味になるかなあ?と思った。

音楽がやけにかっこいい映画だなと思った。

こんなに少しのもので満足し、足ることを知る映画は素敵だと思った。

最後に監督が木漏れ日という日本語を紹介していて、木漏れ日の光の移り変わりやそれをいいなあと思う平山の人生を肯定している素敵な映画でした。

『BLUE GIANT』星4っつ★★★★#上原ひろみ

2023年の日本のジャズ音楽アニメーション映画。

ピアノが上原ひろみ

BLUEGIANTはクレアという雑誌で漫画の紹介で知り、この前の日本アカデミー賞でアニメ映画を知りました。

まず、何が良かったって音楽を表現するのにアニメーションの手法がかなり極限まで合っているということ。とくに表す音楽がジャズというのがこのアニメーションの宇宙的な音楽を表現していたり、演奏している人がかっこよく見える表現をしていたり。

ド直球なテナーサックス奏者宮本大と技巧的で理論的に音楽を考えるピアニスト雪祈、そして始めたばかりでまだ失敗をするけど、それでもものすごい勢いでドラムを吸収していく玉田。

ピアニストの雪祈の演奏を上原ひろみがやっていた様子。

技巧的なんだけどそれを内臓がめくれるくらいの演奏にしたのが上原ひろみだからこそなんだと思います。

音楽なんだけど、スポコン漫画を見ているような気さえしてきます。

題名のBLUE GIANTはジャズ界の中でも赤く光る炎よりもさらに熱い青い色で燃えている炎のように熱いジャズマンのことを言うのだとか。

音楽アニメーションだと『のだめカンタービレ』とか『ピアノの森』を思い出すが、音楽の音のアニメーションでの表現方法だとこちらのほうが上回っている様子。

最後のほう、まさかの展開なんだけど、それでも夢を叶えた三人組。

音楽を漫画で知ると音楽自身を聴けなかったりするが、アニメーションだと音楽を聴けてなおかつ漫画の良さもあっていいものだなあ。

『椿の庭』星4っつ★★★★#富司純子

2020年の日本のドラマ/ドキュメンタリー映画

この映画ドキュメンタリーというのかな?

ドラマ映画だったけど、富司純子の家の庭や花、金魚、虫や家のたたずまいや家から見た海の様子、空や月虹などがその瞬間しか味わえないような気がしてドキュメンタリーと言えばドキュメンタリーなんだろうかとも思った。

うちの母が観たいと言うので観たが母は途中で飽きていた様子。

私はこの映画は家のたたずまいなどを表したい映画なんだろうなと思って結構観れた映画でした。

椿の庭と言うけど、椿だけではなく庭の花や虫、あとその時期その時期の果物を食べて(桃やスイカなど)季節を感じる映画でした。

葉山なのかなあと思ったがよく分からず。

こういう家で祖母と季節を感じながら過ごすのは尊いことだなと。

一人で暮らすには大変かと思ったけど、二人で暮らすにはとてもいい家でした。

富司純子の亡くなった旦那さんのお友達が遊びに来た時、とても幸せな友人関係なんだろうなと思った。

あまり事件も起きず、淡々とした映画ですがそれでも家を売らないといけないという事がおきて、富司純子が悲しんだり、薬を飲まなきゃいけないところ、薬を捨てていてささやかな抵抗をしていたり。

最後のほうで家を壊し始めたとき、あんなにいい家がこうなるのかと観ている私たちも悲しくなりました。

池にいた金魚が金魚鉢にいる金魚に変わり住んでいるところが変わってしまったのは人間も金魚も一緒なんだなと思った。

やはり、場所はその人の記憶を残す場所でもあるのだなと。